40歳からのお金と働き方2

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「40歳からのお金と働き方」について、株式会社エムイーネット代表取締役社長で、ファイナンシャルプランナーでもある鈴鹿勝章さんにお伺いしました。今回は、起業を含めた働き方を中心に話してもらいました。

これからの働き方。起業?サラリーマン?

―― ずっと働いていくことを考えると、起業も1つの選択肢であると思います。鈴鹿さんは、どのような経緯で、今の仕事をされているのですか?

大学を卒業した後は、銀行に10年くらいいました。その後、転職して1年ほどITベンチャーで働いていたとき、人に頼って生きていたらいけないと思うようになりました。何ができるんだろうと考え、銀行でずっと融資業務や証券業務などを担当していたので、立派なCFO(chief financial officer=最高財務責任者)になろうと志し、自分でコンサルティング会社をつくりました。会社設立後、すぐに銀行とITベンチャーの時の知り合い3人からそれぞれ話があり、結局、医療とゲームとIT系企業の3社と契約することになったのです。
こういった経緯で3社の契約社員をすることになり、キャリアが3つに分かれました。そのうちの医療が、今の株式会社エムイーネットにつながっていきます。
エムイーネットは最初は医療コンサル企業としてスタートしましたが、大赤字になって内紛が起こり、空中分解してしまいました。そのような中で大株主の1つから私が社長をやるように指名され、2004年、36歳の時に社長になりました。そして、医療コンサルをしていても経営状態は変わらないと考え、訪問看護事業を始めたのです。

―― 人生100年時代で、老後は定年延長か、再雇用か、転職か、起業かなどと言われていますが、やはり鈴鹿さんのように起業するなら早めにしておいたほうがよいのでしょうか。

起業して失敗している人はたくさんいますから、起業は積極的にはお勧めしません。

―― 人生設計としては、今、サラリーマンをしているなら、サラリーマンを辞めないほうがよいのでしょうか。

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いろいろとタイプがあると思います。自分の場合、銀行はすごくお固いところで、余計なことをしてよく怒られていました。「マニュアルにないことをやるな」「ちゃんと誰々さんに話を通したのか」、退職を決意した最後のきっかけは、高校の同窓の先輩に言われた「もっとゴマすりを頑張れ」という一言でした。みんなで働いている職場で、人が動かしている組織なのだから、周りの人、特に上の人によく思われるようにやれということだと、今思うと言われたことの意味はわかるのですが、その親身になって考えてくれた一言で「これ以上、自分は無理」と思ってしまった。そうやって自分を追い込んで組織をから出てしまった人もいれば、仕事をしていて「自分の社会的使命はこれだ、やりたいことはこれだ」と起業する人もいるでしょうし、その辺はどちらでもよいのかなと思います。あまり向いていない人が起業して、その後に「借金は残ったけどサラリーマンに戻れて嬉しい」と、晴れ晴れとした顔で言っていた人も知っています。

―― どういう人が起業に向いているのですか?

どんなニーズを相手にするかで違うと思います。ITサービス系のように技術革新や競争が厳しい世界だと、動きの速い人のほうが向いていると思います。どちらかというと怒鳴り散らしてでもやることはやる人。逆にゆったりしている人は、スピードに置いていかれるところです。

―― そういうおっとりした人は起業しなさそうに思いますが。

介護などで起業する人は、多少おっとりしているほうがよいと思いますね。私たちの訪問看護ステーションも、今は落ち着いていますが、昔はクレームなども多くて、年に1回くらいは土下座をしに行くこともありました。クレームが生じる前に、小さいミス、ヒヤリハットなどがあって、そこで上手くブレーキがかからずに土下座しに行くことになりましたが、小さいミスにピリピリしていたらもたないと思います。多少おっとりした人のほうが、ヘルスケアやサービス業には向いていますね。鈍感力のようなものが必要だと思います。一方で、鈍感力に長けた人は、ITサービス系などは避けたほうがよいのかなと思う。IT系で上場した会社の社長さんは、反応が早くて、買収などもすぐに決めますね。向き不向き、自分の性格と相手にするニーズがマッチするかどうかです。起業する機会は誰にでもあると思うので、自分に合ったマーケットやタイミングが来るか来ないかだと思います。
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鈴鹿勝章(すずかまさあき)さんプロフィール
株式会社エムイーネット代表取締役
1991年東京大学法学部卒業。三菱銀行(現:三菱東京UFJ銀行)を経て、2001年から在宅医療クリニック開業支援および運営サポートに多数携わる。現在は都内で訪問看護ステーションを運営中。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。